平成を振り返り日公連が行った要望事項と制度改革に反映された内容

バブル崩壊により多額の不良債権が発生し、⎾失われた二十年⏌に象徴される激動の平成時代から新しい時代の幕開けとなる令和元年へと時代は移った。
そこで今回は平成を振り返り諸先輩が行った要望事項と制度改革に反映された内容について見ることにする。

【1】職域加算の廃止と年金払い退職給付の創設(年金一元化問題)

マスコミ等公務員バッシングの風潮の下、年金の官民格差を是正するとの観点から共済年金の職域加算の廃止や追加費用の早期廃止を求め、⎾被用者年金制度の一元化法案⏌が平成19年4月に国会へ提出された。

これに対し、日公連は
⎾公務員の年金制度改革に当たっては、その職務の特殊性、有為な人材の確保について十分配慮すること⏌、⎾既裁定年金は、国が法律で約束したことでありその権利は保証すること⏌等の要望を関係省庁や各党に積極的に行い、平成21年7月衆議院の解散に伴い一度の法案審議もなく廃案となる。しかし、平成24年4月に⎾社会保障と税の一体改革関連法案⏌として当時の民主党政権の野田内閣は⎾被用者年金制度の一元化法案⏌を三党合意のもと再び国会へ提出し、同年8月に成立する。その結果、職域加算部分については、共済年金制度が厚生年金に統一された平成27年10月に廃止されたが、次のような配慮が行われている。

① 平成27年10月に既に共済年金の受給者は、引き続き職域加算部分を含む年金が終身受けられることとなった。
② 平成27年9月まで共済年金の保険料を収めていた人は、将来その期間に応じた職域加算が受けられることになった。
③ 現役公務員については⎾年金払い退職給付制度⏌が創設された。

【2】追加費用の減額(一元化問題)

一方、恩給制度当時の追加費用の減額は恩給期間の年金額の27%であるが、これも配慮措置として年金総額の10%を限度とする他、年金額230万円を下回らないことも入った。

【3】基礎年金の国庫負担割合引き上げに伴う財源の恒久化

我が国の少子高齢社会の今後に対応するため、かねて日公連が要望していた事項が、平成16年の年金改正で実現することとなった。
すなわち年金制度を持続可能なものとするため、基礎年金の国庫負担割合を従来の1/3から1/2へ引き上げることとされた。しかし、その財源が財政投融資特別会計からの繰り入れや東日本大震災の復興債の一部で補填する等不安定な臨時的な財源で手当てされていた。そのため日公連及び全国の退公連は⎾基礎年金の国庫負担割合二分の一を速やかに恒久化すること⏌を再三に亘り要望し、平成26年4月の消費税率の引き上げ財源の一部を充てることにより1/2の財源を恒久化することとなった。

【4】デフレ経済下でのマクロ経済スライドの実施

年金財政の持続性を維持するため、現役世代はデフレ経済下においても平成16年から平成29年にかけて、毎年厚生年金の保険料率を0.354% 引き上げてきた。一方、年金受給者の年金額については、デフレ経済下では物価スライドは行うが、マクロ経済スライドは平成27年度に一回実施されただけであった。そのため、社会保障審議会の年金部会委員からはマクロ経済スライドはデフレ経済下にあっても完全に実施すべきとの意見がでていた。これに対し、日公連は⎾デフレ経済下でのマクロ経済スライドの実施は公的年金に頼らざるを得ない多くの高齢者の生活を圧迫するものであり慎重に取り扱うこと⏌を再三に亘って要望。
平成28年の年金改正で、年金額の改定ルールの見直しが行われた折、マクロ経済スライドの見直しは名目下限措置(年金名目額が前年度を下回らない措置)を維持しつつ、その間の調整分は賃金・物価が上昇したとき、その範囲内で前年度までの未調整分を含めて調整することとされた。
この平成28年の改正でも名目下限措置を維持できたのは高齢年金受給者への配慮であり、公務員OBのみならず民間の年金受給者にとっても評価に値する。

【5】公的年金額の物価スライド特例措置による凍結分の遡及の阻止

これは、平成12年度から14年度にかけて、物価変動率がマイナス0.3%,マイナス0.7%,マイナス0.7%と三年連続でマイナスであったが、特例的に年金額のマイナス改定は行わずに年金額は据え置きとなった。この特例水準の年金額はその後平成26年度まで続く。
日公連は、この据え置かれた分が遡及してマイナス改定されないよう⎾公的年金額の物価スライド特例措置による凍結分の遡及反対⏌を要望し、その通りとなった。

【6】65歳定年制の実現に向けて

今後の我が国は、人口の高齢化が一層進行すると共に現役世代の減少が懸念される状況が見込まれている。そのため、年金の支給開始年齢も段階的に引上げられている。そこで日公連は、⎾雇用と年金の接続の重要性に留意し、65歳定年制を実現すること⏌をいち早く平成21年度の全国大会のスローガンに掲げて要望活動を関係方面へ展開してきた。一方、政府はこれまで雇用と年金の接続に当たっては、再任用制度で対応してきた。しかし、平成29年6月に決めた経済財政運営の指針に、高齢者の就業促進の観点から公務員の定年引上げを具体的に検討する必要性を明記した。また、自民党の一億総活躍推進本部も平成29年5月に公表した提言で65歳まで現役で働ける社会づくりを進めるべきだと訴えた。これを受け政府は、国家公務員の定年を60歳から65歳へ段階的に引き上げる検討を行うも、令和元年は参議院選挙等を控えているため、その後に関連法案の国会提出を行う予定で、この実現を目指すことになる。

【終わりに】

最近は、全国の退職公務員連盟とも、会員の減少に苦慮しているがこのように見てくると、平成の時代も日公連と全国の退公連は、絶えず世の中の変化に対応し、いち早く会員及び家族の生活保障の維持改善に努めてきたことが分かる。
今日、安心して年金を受けられるのも終戦直後の混乱と困窮の渦中から座視しておれぬ危機感を持って立ち上がり懸命に時代の流れに沿って、要望活動を行ってきた結果である。
私たちは先輩達のこの努力の成果を次世代へ引き継いでいかなければならない。
この平成の振り返りがそのための参考資料となれば幸いである。