日本退職公務員連盟の会員の皆様へ
年金改正法案が、5月16日閣議決定の上、国会に提出され、議論が始まりました。 同月27日には、自民、公明、立憲民主の党首会談が行われ法案の修正に合意したことにより、今国会での成立が確実な情勢となっています。改正案の動向は、逐次、ホームページやLINEでお知らせすることとし、今回は、「当連盟の緊急要望が法案にどう反映されたか」について、解説します。
今回の改正に当たっては、法案が提出される前に関係大臣等に要望を伝えることにより、法案への反映を求めることとし、昨年12月16日、社会保障対策委員会を開催して、「緊急要望」をまとめ、今年1月に総務大臣、厚生労働大臣に、鴨下会長が直接会って、要望しました。また、4月3日には、自民党の関係合同部会からのヒアリングにおいても、「緊急要望」について説明し、理解を求めたところです。自民党はその後、ヒアリングした団体の意見を参考に議論を行ったうえで、法案の提出を決めました。当連盟の要望が、法案にどのように反映されたのかについて、考察します。
1:マクロ経済スライドの早期終了
この事項については、「早期終了」を求めましたが、その趣旨は、早期に調整を終了して、本来の年金額の改定方法、つまり、物価等の変動に応じたものに戻してほしいというものです。その際、次の3つの条件を付けました。
① 早期に終了するため、あらゆる施策を駆使して行うこと
② ①の施策には、「名目下限措置」は含まないこと なぜなら、この措置は年金生活者の生活の安定を図る目的で設けられたものであり、継続すべきものだからです。
③ 新たに、厚生年金の積立金を活用した、基礎年給付費の按分方法を導入する議論がなされているが、その内容について、国民が納得するような説明をされたいこと
この「積立金按分の仕組みについて」は、自民党のヒアリングにおいても、当連盟のほか複数の団体が、「国民が納得する説明が必要」としていることもあり、今回の法案から除外し、継続検討とされたものであり、当連盟の意見が反映されたものと考えます。 なお、この事項は、立憲民主党から「基礎年金の底上げ措置」であり、法案を「復活すべき」との意見が出され、党首会談の結果、法案の修正が行われますが、「国民が納得する説明が必要」であることに変わりはありませんので、引き続き説明を求めていきます。
2:基礎年金拠出期間の延長
この事項は、厚生労働省が、「拠出期間の延長により、保険料負担が100万円を超える」という批判が多くあるとして、早々に法案に盛り込むことを断念したものですが、当連盟は、拠出期間の延長は、就労年齢の変化や健康寿命の延びなどを考えると、将来の年金額増に繋がることから、今後も引き続き検討するよう要望したものです。
自民党は、各団体の意見を聞いたうえで、次期改正に向けての「検討事項」として、法案に明記することとしたものです。これも今回の要望の大きな成果であると考えます。
3:被用者保険の適用拡大
この事項は、前回改正以降適用拡大を実施中ですが、さらに進めることにより、本人の将来の年金額が増額され、また保険料が現在の年金給付の財源になるなどの好影響となりますので、緊急要望では、これらを「確実に実施」することを求めています。今回の法案では、事業主等の事務負担などへの配慮をし、10年かけて段階的に実施されるものも含まれてはいますが、全体的に、当連盟の意見が反映されたものとなっています。