日本退職公務員連盟の会員の皆様へ
改正された年金法については、<続・トピックス>で厚生労働省が公表した資料を掲載しましたが、今回以降、数回にわたってその資料(毎回解説箇所を別添)に沿って分かりやすく解説します。
第1回は、我が国の「年金制度の基本的な仕組み」、「公的年金制度とライフコース」、「賦課方式と積立方式」、「年金制度改正の全体像」及び「年金制度改正の施行日」について解説します。

P.2解説:「年金制度の基本的な仕組み」は、3階部分の任意に加入できる制度を含むものですが、税制優遇のある制度を加えて3階の構造になっています。 このうち厚生年金は、基礎年金の上に報酬比例部分を加えた2階建ての年金になっています。勿論保険料も、1,2階部分トータルで18.3%です。事業主との折半負担となっています。

P.3解説:「公的年金制度とライフコース」は、前ページの基本的な仕組みを現役時代と引退後に分けた上で、負担と給付の形を図にしたものです。このうち、厚生年金については、2階部分の報酬比例部分の額は、現役時代の報酬によって、負担する保険料額が異なり、その額に応じて年金額が計算されるので、年金額もまちまちです。従って、図では、平均年金額が記載されています。また、国民年金の額は、40年加入した場合の満額が記載されていますが、保険料を納めなかった期間があればそれに応じて給付が減額される仕組みになっています。

P.4解説:次に「賦課方式と積立方式」についてです。「賦課方式」とは、働く人(支える人)が負担する保険料で、その時代に年金を受け取る人(支えられる人)の年金を支給する仕組みです。支える人が、年齢を重ねて支えられる側になると、次の時代の支える人(子や孫)の保険料で年金を受け取ることになります。 「積立方式」とは、自分が将来受け取る年金の財源となる保険料を積み立て、また、その積立金を運用していき、年齢を重ねて高齢になった際に、その積立金を取り崩して年金を受け取る仕組みです。

P.5解説:「日本の公的年金はハイブリッド」とありますが、日本の公的年金の基本的財政方式は、賦課方式ですが、図にありますように、過去に支える人が多かった時代から積み立てられた積立金があるので、賦課方式と積立方式の「ハイブリッド方式」で制度が成り立っています。 (注)ハイブリッドとは、「異なる要素を組み合わせる」という意味 また、年金の財源は、保険料及び積立金に加えて、基礎年金給付費に対し、給付総額の2分の1の国庫負担(税金)がありますので、「長期的な年金の財源」は、図の右にあるように、保険料収入7割、国庫負担2割、積立金1割という構成になっています。

P.6解説:「主要国の年金制度は?」というと、6ページに記載がありますが、アメリカ、イギリスを初め主要国の年金制度も概ね賦課方式を採っていることが分かります。また、この資料を見ると、主要国のうち、国民皆年金を実現しているのは、日本とスウェーデンの2カ国しかないことが分かります。 厚生労働省が、なぜ今回の改正関係資料に財政方式の資料を掲載したかというと、国会では、現役世代の負担の増加や自分たちが年金受給世代になったときに、年金を受給できないのではないかといった、不安の声があることから「積立方式にすべきではないか」という議論がありましたが、それを実施するとした場合には、こうした懸念があるのではないかという趣旨で、掲載したのではないかと推察します。

P.7解説:そこで、資料7ページ、「賦課方式から積立方式に移行する場合」に図がありますので、解説します。 前述したとおり、賦課方式は、働いている人が支え手として保険料を負担し、その時代に年金を受け取る人を支える仕組みです。この方式を変更し、積立方式にすることは、図にあるように、現行と同じように賦課方式の下で、支える側として保険料を負担しながら、自分が将来受け取る年金の積み立てを行うことになるので、「二重の負担」が発生します。その負担に耐えられるのでしょうか。 それが無理だとなれば、賦課方式を止めて、積立方式だけにするとした場合には、どうなるのでしょうか。これは、神輿の上に乗っている人を神輿の上から落とすということに他ならず、生活の大半を公的年金によって賄っている多くの人は、支え手をなくして生活に困窮し、他の施策に救いを求めることになりますが、国はその財源の確保など大変難しい問題を抱えることになると考えます。

P.9解説:次に、資料9ページ「年金制度改正の全体像」についてです。 これは、今回の改正の全体像をまとめたものです。「基本の考え方」として、次の2点が示されています。 ① 働き方や生き方、家族構成の多様化に対応する ② 現在の受給者、将来の受給者の双方にとって、老後の生活の安定、所得保障の機能を強化する 主な改正内容として5つの事項が挙げられていますが、いずれもこの基本の考え方に基づいて改正されたということです。

P.10解説:10ページには、「年金制度改正の施行日」が図示されていますが、最も早いものが、「在職老齢年金の見直し」で2026年4月から、最も遅いのが、「社会保険加入対象の拡大」のうち、企業規模要件が10人以下の企業の社会保険加入で、2035年10月からとなっています。これは、事業主の事務負担等を考慮して、段階的に実施するというものです。
次回以降は、個別の改正事項について、順次解説します。
【本ページで解説した資料のPDFです。各支部での共有等でご利用ください。】
■年金改正法わかりやすく解説資料