日本退職公務員連盟の会員の皆様へ
第2回は、「社会保険の加入対象の拡大」について、別添資料(11ページ~17ページ)に沿って分かりやすく解説します。
この事項は、今回の年金改正にあたり、当連盟が関係大臣並びに自民党に対し、緊急要望した3項目のうちの一つです。 要望書には、「被用者保険の適用拡大を確実に実施し 年金水準の向上を図られたい」としています。すでに前回改正以降、適用の拡大が進められていますが、この適用拡大が目標通り実施されれば、最終的には、860万人が社会保険に加入することになります。これにより、加入する人たちの将来の年金給付が増額され、また、加入する人たちが支払う保険料が現在年金を受給している人たちの年金給付の財源になります。なお、この860万人という数字は、先般公表された、2,024年の出生数68万人余の12年分に匹敵する数で、これらの人たちが、支える側に加わるということになり、年金財政に好影響をもたらす政策と言えます。

p12解説:「短時間労働者の社会保険の加入拡大が行われると・・・」についてです。 現在の短時間労働者の加入要件は、勤務している企業の規模が51人以上の企業に限られていることや本人の週の勤務時間が20時間以上とされていること、また、給与が月額8.8万円以上(いわゆる106万円の壁(8.8万円×12月=105.6万円))とされるなどの要件が定められているので、加入したくても加入できない。あるいは、加入すると保険料負担が発生するので、勤務形態を変更して加入対象から外れるようにする人もいるようです。今回の見直しでは、将来、企業規模要件や給与月額要件を撤廃することによって、将来の年金額の増額など、手厚い保障を受けられる人が増える仕組みとすることとされています。

p13解説:「月額8.8万円以上の要件(賃金要件)を撤廃します」についてです。 いわゆる「年収106万円の壁」を撤廃するということです。図にあるように、現在は、「週20時間」働いても月収が「8.2万円」というように、8.8万円を下回る場合には、加入要件を満たさず、社会保険に加入できないことになっていますが、この賃金要件を撤廃することにより、社会保険に加入することが出来るようになります。月額8.8万円は、時給に換算すると、1,016円を上回ると該当するので、全国の最低賃金の引き上げ状況を見極めることとし、法律の公布の日から3年以内に判断することとされています。
(参考)2024年最低賃金ランキング(1,016円を超える都府県を抜粋)
1位東京1,163円 2位神奈川1,162円 3位大阪1,114円 4位埼玉1,078円 5位愛知1,077円 6位千葉1,076円 7位京都1,058円 8位兵庫1,052円 9位静岡1,034円 10位三重1,023円 11位広島1,020円 12位滋賀1,017円

p14解説:「働く企業の規模にかかわらず加入するようになります」についてです。 図のように、企業規模要件は段階的に対象を拡大してきましたが、現在は51人以上の規模の企業に働く人が社会保険に加入します。この要件を図の右のように、10年かけて段階的に縮小・撤廃することとされました。このことにより、短時間労働者が週20時間以上働けば、勤め先にかかわらず社会保険に加入できるようになります。

p15解説:「社会保険に加入する個人事業所の適用対象を拡大します」についてです。 これは、法人組織となっていない個人事業所について、現在は、法律で定める17業種を除いて適用対象外としていますが、今回の改正で、適用対象を拡大しようとするものです。

p16解説:「社会保険の加入は第1号被保険者にとってもメリットがたくさん!」についてです。 この図は、国民年金の第1号被保険者(会社に勤めているが、賃金月額が8.8万円未満で社会保険の適用がされていないケース)が厚生年金に加入するとメリットがあることを示したものです。 図の下段にあるように、会社に勤めている第1号被保険者は、国民年金の保険料と国民健康保険料とで、月額23,600円(国民年金保険料17,510円(2025年度)+国民健康保険料約6,000円)を負担し、給付は、基礎年金だけですが、社会保険(厚生年金と健康保険)に加入すると、図の上段にあるように、会社が保険料の半分を負担してくれます。また、給付面では、厚生年金を受けることが出来ますし、病気やけがで会社を休んだ場合には、健康保険から「傷病手当金」を受けることが出来ます。さらに、「出産手当金」を受けることが出来るなどのメリットがあります。

p17解説:「社会保険の加入拡大の対象となる短時間労働者を支援します」についてです。 図にあるように、企業規模要件の見直しなどにより、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者や事業主に対し、3年間支援が行われます。 「具体的には」とありますが、年収106万円(月給8.8万円)の場合に、本来は、事業主との負担割合2分の1ですからそれぞれ12,500円ずつですが、支援策を使うと、右の表のように、負担割合が、25対75の場合には、本人負担額は、6,250円になりますが、75を負担する事業主に対しては、様々な支援が検討されているということです。
【本ページで解説した資料のPDFです。各支部での共有等でご利用ください。】
■第2回:年金改正法わかりやすく解説資料