【第3回】年金改正法についてわかりやすく解説します!

日本退職公務員連盟の会員の皆様へ

第3回は、「在職老齢年金の見直し」及び「保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ」について、別添資料(p18~28)に沿ってわかりやすく解説します。

P18解説:先ず、「在職老齢年金の見直し」についてです。この事項は、当連盟が毎年関係大臣に提出している要望書に盛り込んでいる内容の1つです。その内容は、「進行する超高齢社会・人口減少社会にあっては・・(略)健康で働く意欲のある高齢者及び女性・・(略)が安心して働きやすい労働環境の改善整備に特段の努力をされたい」としており、労働力減少が著しい中、労働をためらうような環境は排除してほしい、という願いですが、今回の改正は、この要望に応えるものだと思います。

P19解説:「現在の在職老齢年金制度について」です。 年金受給者が、働いて一定の賃金をもらっている場合には、年金給付の額を制限する仕組みです。具体的には、図の上段にあるように、賃金と年金額の合計が50万円(2024年度)を超えると、50万円を超えた額の2分の1、つまり、55万円-50万円=5万円の2分の1の2万5千円が厚生年金の支給停止額になります。

P20解説:今回の改正内容を見る前に「65歳以上の在職老齢年金制度の状況」について見てみましょう! 平均寿命と健康寿命が伸びていて、働き続けたいと考える高齢者が増えているという指標が中段に示されています。寿命は、65歳時点の平均余命で表されていますが、1990年では、男性16.22年、女性が20.03年だったものが、2070年(推計)では、男性23.14年、女性28.36年と、男性で約7年、女性で約8年伸びるとの推計です。健康寿命では、2001年では、男性69.40歳、女性72.65歳だったものが、2019年では、男性72.68歳、女性75.38歳と、男女ともに約3歳伸びています。また、就業率ですが、寿命が延びる中、2003年には65~69歳の人の34.7%が働いていましたが、2023年には、53.5%の人が働いていて、18.8%増加しています。 少子化が進展し、出生率が低下する中、労働力確保の観点からも高齢者の働く環境の改善整備に努力が必要だと考えます。因みに、働く年金受給者308万人のうち、16%は年金の減額に該当しているとのデータが示されています。

P21解説:「在職老齢年金を取り巻く環境①」についてです。 この図は、何歳まで仕事をしたいかを高齢者に聞いた結果を表したものですが、65歳以上でも働きたいと答えた人58.4%、70歳を超えても働きたいという人が25.8%という結果でした。この人達の働きやすい環境を整備する必要があるということだと思います。

P22解説;「在職老齢年金を取り巻く環境②」についてです。 この図は、厚生年金を受け取る場合は、「一定以上の収入があると、受け取る年金が減りますが、あなたはどのように働きたいですか?」と尋ねたものです。その結果、働かない29%、年金額が減らないよう調整31.9%、会社等で働かない9.7%で合計70.6%が、働かないかまたは何らかの調整をすると回答。年金額の減額にかかわらず働くという人は、17.2%に止まっている。この結果は、年金額を支給停止されるなら何らかの方法で、それを回避するという人が多くいるということだと思います。

P23解説:「在職老齢年金制度の見直しについて」です。 出生率の著しい低下や労働力減少が顕著になる中、健康寿命等の延びもあり、高齢者の働く意欲は増しており、働きたい人が働きやすい仕組みとする観点から、在職老齢年金の支給停止の基準額を引き上げることとされた。 具体的には、図の下段にあるように、賃金と年金額の合計が、62万円を超えると、超える額の2分の1が厚生年金の支給停止額になります。従って、図の上段(p19のケース)の場合には、支給停止とはならず、満額支給となります。 (45万円+10万円=55万円>62万円となるので、満額支給)

P24解説:「よくいただくご質問」についてです。 「今回の見直しの目的は何か、将来世代の給付水準が下がるのではないか」という疑問に対する回答が記述されています。 前述したように、人手不足が深刻になる中、高齢者の労働意欲は高いが、そうした労働意欲を在職老齢年金制度が削ぎ、労働参加を妨げている例もあるとのことから、高齢者の活躍を後押しし、できるだけ労働を抑制せず、働きやすい仕組みとする観点から在職老齢年金制度の見直しを図ることとしたもの、と回答しています。 また、将来世代の給付水準が低下するため、現行水準を維持すべきという意見があるが、在職老齢年金制度の見直しを含め、全体で見れば、将来の給付水準は上昇する、と回答しています。 次に、「保険料や年金額の計算に使う賃金(「標準報酬月額」といいます。)の上限の引き上げ」についてです。

P26解説:「厚生年金における保険料の算定対象について」です。厚生年金の保険料は、毎月受け取る賃金(月給)と賞与(ボーナス)について、それぞれ別に計算します。月給は、毎年4~6月の額を元に「標準報酬月額」を計算します。また、ボーナスは、支給される毎に「標準賞与(ボーナス)額」を計算します。そのうえで、保険料を計算しますが、月給、ボーナスのそれぞれについて、18.3%の保険料率を乗じて決定します。その負担は、本人と事業主とで2分の1ずつです。

P27解説:「実際の賃金などに対する保険料の割合」についてです。 現在の標準報酬月額の上限は、65万円ですが、この額を超える月給を受けている人は、保険料率が18.3%(本人と事業主が9.15%ずつ負担)で一律ですから、実際の月給に対する保険料の負担割合が低くなります(月給71万円の人で8.38%、75万円の人で、7.93%)。また、年金に反映される額が図にあるように低くなります(月給71万円の人で年金額に反映されない部分が0.65%、75万円の人で1.22%)。

P28解説:「標準報酬月額の上限の見直しを行った場合の給付と負担」についてです。 標準報酬月額の上限の見直しを行った場合に、保険料と年金額の増加額(1年分)がどうなるかを表にしたものです。どの上限額にした場合でも、負担する保険料は増加するものの、将来の年金額も増加することを示しています。保険料負担の増加は、将来の年金給付の増額に繋がるとともに、年金受給者の給付の財源にも寄与します。


【本ページで解説した資料のPDFです。各支部での共有等でご利用ください。】

■第3回:年金改正法わかりやすく解説資料