令和7年度全国大会 記念講演「人生100年時代を健幸に過ごすコツ」

日本退職公務員連盟の会員の皆様へ

令和7年度全国大会での記念講演「人生100年時代を健幸に過ごすコツ」を配信いたします。

「人生100年時代を健幸に過ごすコツ」
筑波大学人間総合科学学術院教授・医学博士 久野 譜也 先生


筑波大学で高齢者の健康寿命延伸を目的とした運動プログラムの開発に取り組んでおられる「筑波大学大学院 人間総合科学学術院 教授 久野譜也先生にお話しをお願い致します。

みなさん、こんにちは。
みなさんは、何歳まで元気に生きる予定なのか、80歳代と思っている方手を挙げてください、ほとんどですね。
90歳代と思っている方、数えられないくらいかなりの数いらっしゃいますね。
次いよいよ100歳代だと思っている方は、3人ですか。少し少ないですね。
科学的に何歳まで、寿命の可能性があるかご存じですか。

還暦という言葉がありますが、この言葉が出来たのはすごいです、暦が還るですから。
遺伝子の状態からすると、人間は120歳くらいまで生きられるものを持っています。
還暦60歳は、マラソンでいう中間地点を回ったところでゴールはまだ相当遠いです。
ぜひそこまで頑張っていただきたいけど気合だけではだめです。
恐縮ですが、みなさんに立ったり座ったりしていただきたい。

みなさんが今の年齢から10年後は、どんな感じで立ったり座ったり歩いたりできるかイメージしてください。そのイメージで立ってください、もちろんピュッと立てる方はOKです。10年後は弱っているんじゃないかと思う方は、演技してくださいね。10年後の皆さん立ってください。さすがですね、7割くらいは大丈夫なようです。
では、10年後をイメージして座ってください。
なぜこんなことをしていただいたのか。

100歳まで元気で自分の楽しみを維持しながら生活していただきたい、身体の一番のポイントは、筋肉です。筋肉が弱ってしまうと、立ったり座ったりも100歳の寝たきりの人は、立ち上がるだけで1分半くらいかかる。30秒くらいかかる人は85歳くらいから一定数でてきます。旅行やみんなと一緒に行動するには、立ったり座ったり何気ない動作がスムーズにできるかが重要になります。人と会わない・出かけない・動かないとどんどん弱っていきます。寝たきりになる可能性が大きい。立ったり座ったり何気ない動作、この何気ない動作が続けられるかがチェックポイントです。ぜひ1年に一回、誕生日・正月とかにチェックしてください。何気ない動作がどの位スムーズに続けられるかが、ポイントです。

太ももの筋肉は、20歳代(100%)に比べて60歳以降平均4割減っています。
研究室のデータでわかったのは、40歳以降何も筋肉の運動(筋トレ)をしていない人は、年1%づづ筋肉が減っていきます。筋肉のメンテをしていない人は、一年後にはさらに今の状態より必ず1割減るということです。筋肉の量が減ることが足腰が弱まる。80・90歳になると歩く速度が遅くなる。

おへその横の両側、その奥背骨の横に(画像を参照)上半身と下半身をつなぐ筋肉が二つあります。これが、寝たきりにならないための重要な筋肉で、大腰筋と言います。



大腰筋(丸っこい筋肉)この筋肉が立ったり座ったり、歩いてつまずかないために一番重要な筋肉です。体の中にはいろんな筋肉があって全部の筋肉を鍛えるには、1時間半くらいかかりますが、元気に100歳まで自由に歩いたり、立ったり、座ったり、また一定の速度で歩くためには、実は下半身の筋肉大腰筋と太ももを鍛えることが、元気でいるために重要だとわかっています。
元気に過ごすという意味では、ふくらはぎの筋肉などは無理して鍛える必要はありません。

大腰筋、丸っこい形状は何か思い浮かべませんか。
トンカツを思い浮かべてください。ロースかヒレを選べますよね。ロースは平べったいですが、ヒレは丸っこいですよね。ヒレと呼んでいるところが豚の大腰筋です。さらにこの大腰筋は面白い筋肉で、文化人類的な視点ですが、猿と人間の違いを思い浮かべてください。一番違う点は、猿は4足歩行、人間は2足歩行。猿と人間は、99%同じ筋肉を持っていて、猿も人間も大腰筋を持っていますが、同じ名前の筋肉、大腰筋は唯一付いている場所が違います。
人間は、二足歩行になって手が自由に使えるようになりました。進化したということが進化論で明確になっています。みなさん今晩寝られると思いますが、人間が猿から進化したとき、大腰筋のつく位置がいつ動いたのか考えてください。たぶん結論は出ない、今晩は寝れないと思いますが。

大腰筋という筋肉を含め、太ももの前と裏側(大腿部太もも)2か所をきたえること筋トレを行う事が120歳までの近道です。
どんなことをやればいいかというと・・・時間があればあとで簡単にできることをやろうと思います。

それから次に120歳まで元気に過ごすためのポイントが、筋肉以外にもう一つあります。
それは何かというと動脈です。動脈硬化という言葉もよく聞かれると思いますが、動脈硬化を見るためにわれわれは血圧を測っています。動脈が硬いかどうかを測るのは大変なことですので、簡単な方法としてわれわれは血圧を測ります。血圧が高くて降圧剤を飲んでいる方が一定数いると思いますが、それは動脈硬化になってきているということです。
動脈が硬化、硬くなってきているというは、血管が切れたり・脳卒中・心筋梗塞という病気になってしまうわけです。これを起こしたくないわけです。
では、どうしたらいいかというとある意味簡単です。動脈を柔らかくすることです。

庭の花に水をやる時、ホースは外に出てますよね。買ってきたばかりのホースは、柔らかいです。寒い2月午前3時頃をイメージしてください。朝方寒くなるとホースも硬くなっています。買ってきたばかりの柔らかいホースは、折っても曲げてもなかなか切れないです。柔らかいということは切れにくいということ、20歳台また20歳以下の子どもたちの動脈はそういう柔らかさをもっています。それが5年も外で使っているホースは切れやすい、何か所か切れる可能性が高いです。みなさんの中で血圧が高い方は、自分の動脈が5年くらい使っているホースに近い状態だとイメージしてください。そうすると何かがあったとき、パッキと切れる可能性が高いです。
ですので、最近は、お薬がよくなっていますから降圧剤を処方されている方は、やっぱりちゃんと飲んだ方がいいということです。血圧が高い状態は、動脈が硬くなっていく方向、状態になっているわけですからそこを知っておいてください。

今、夜中の話をしましたが、そういうことをしっかりと理解しておいてほしいです。
私の父は、リタイアしてから健康に目覚めて毎朝4時・4時半に起きて歩いています。
夏はメチャメチャ暑いですから、それくらいの時間に歩いた方が安全かもしれませんが寒い冬にその時間に歩くということは、動脈からしたらものすごく迷惑な話なわけです。
切ってくださいと言っているようなものです。健康のために習慣だからということでいつものペースでやるのは、ぜひやめてください。これから冬は、日が出て温度が上がってから、しかも起きて洋服を着替えてすぐに出るのは絶対やめてください。
先ずイメージとしては、500歩くらいは家の中で着替えたり動いたりしてください。ちょっと歩くと血流が回って血流はもともと温かいので、少し歩くと体温が上がります。体温を上げてから散歩に出てください。そうしないと非常に怖いです。

今年の夏は非常に暑かったので「運動はしてはいけない、控えましょう」という天気予報の案内がありました。気象庁の方から熱中症予防のためとかで、運動は絶対やめてくださいとか出てきます。ですが、3か月間こんなに暑いとその間運動をしないデメリットもあります。

暑いから運動をしないのは逆に言うと、筋肉や動脈を弱めています。
ぜひみなさん、涼しいところで運動する、大きなショッピングセンターに車で行ってウォーキングをするとか、工夫をして実行してください。
暑くても、寒くてもその状態をよく理解して運動をしないと筋肉を減らしていきますし、動脈を硬くします。天候は関係ありません。運動しないとその間に自分の体は確実に、むしばまれていきます。ぜひ工夫をしていただきたいと思います。

動脈の話ですが、どうしたら動脈を柔らかくすることができるか。ホースは新しいのを買ってきて取り替えればいいわけですが、動脈は全部取り替えることは今の医学の技術でもできません。
一つは塩分摂取、高血圧に備えましょうということ。塩分の取り過ぎは、動脈を硬くすることに加担しているんです。だから塩分を抑えましょうということでこれは非常に大事です。
但し、塩を減らした食事をしていくと加齢(老化)で毎年歳をとる毎に動脈は硬くなっていくので、塩を減らすという意味は、塩をたくさん取っている人は動脈が普通の人よりはやく硬くなるということです。ですが、塩を減らしても動脈は柔らかくなりません。

今、科学的に唯一、1回硬くなった動脈を柔らかくする方法が証明されています。 柔らかくするには、ウォーキングです。ジョギング・水泳・水中運動・ダンスなど専門用語では、有酸素運動と言います。効果として硬くなった動脈を柔らかくする力があるとわかっています。運動を始めると血圧が下がるのは、動脈が柔らかくなっているので血圧の値が下がってくるわけです。ウォーキングや筋トレは、みなさんご存じだと思いますが、その意味をあらためて整理をしてお話したつもりです。 健康のための運動は、二つやらなければいけないという話です。

一つは、動脈を柔らかくするためのウォーキングなどの有酸素運動。但し、これだけはやっているという人を私が採点すると、ウォーキングだけでは100点満点で50点しかあげられません。みなさん50点の意味は、分かりますか。大学で単位をとるには60点以上取らないといけません、50点では落第です。残りの50点分は何かと申し上げますと、これが筋トレです。筋肉は、年1%づつ減るとお伝えしました。この減少を抑制したり、減り過ぎた人が増やすためには、ウォーキングは動脈には効果があり脂肪の燃焼もしますが、筋肉の減少には効果がゼロだとわかっています。毎日2時間歩いても全く効果なしです。
何もしない人と同様に1年で今の状態より筋肉は必ず1割減る。筋肉の量は減るということです。
動脈対策のために「有酸素運動・ウォーキング」、筋肉対策のために「筋トレ」この両方の組み合わせが大事だということをご理解いただきたいです。

どれくらいやればいいのかということですが、ウォーキングは毎日やってほしいです。
厚生労働省が出している基準値がありますが、われわれの研究室のデータでは一日8000歩のラインが理想です。但し、今3000~4000歩位だという人は、とにかく5000歩以上をくだらないことが最初のポイントです。
医療費が高い人は、病気をしているわけですが、それを見ると5000歩のところではっきりと線が引けます。5000歩より少ない人は、それだけ非常に病気になりやすいということです。まず5000歩をクリアしていただきたい。クリアしたら次の目標は120歳まで元気に生きていくためには、やっぱり8000歩が必要です。75歳以上を過ぎたら7000歩という値がでています。そのあたりを目安にしていただきたい。

それから、もう一つ大事な話があります。
先ほど、トンカツを食べてくださいとお話したのは、実は意味があります。筋トレをしていても筋肉がつかないと言われる方がいますが、そういう方の食生活をお聞きすると健康のためにと、動物性たんぱく質をほとんど取らないで野菜ばかり食べているとのお話。
筋肉はタンパク質でできている、つまり増やしたいわけですから材料となるたんぱく質を食事でちゃんと取らないと筋トレを頑張っても、筋肉にならないのです。
タンパク質は、大豆などの植物性とお肉や魚などの動物性があります。健康のためにと植物性たんぱく質を取りがちですが、筋肉になりやすいのは動物性たんぱく質だということが分かっています。お肉が必要、あるいは魚が必要です。

先ほどのトンカツの話になりますが、もうひとつ長寿の秘訣に必要な栄養素がわかっています。これはアルブミンという成分になります。
このアルブミンの量が下がってくると残念ながら、寿命を縮める状態になります。このアルブミン量は一定量保つのがいいんですが、このアルブミンが一番豊富に含まれている食材がなんと豚肉です。
15年か20年くらい前に、鹿児島・沖縄は日本の中で長寿県でしたが、その食事の特徴を調べると豚肉の摂取量が非常に高いです。もちろん食事だけで長寿が決まるわけではないですが、糖尿病とか脂質の摂取が気になる方は、トンカツではなくしゃぶしゃぶですとか、油を除く工夫をしてそういう栄養分をしっかり取っていただけるようにしてほしいです。

最後に筋トレをお教えします。
大腰筋を簡単に鍛えられる筋トレは、スクワットです。
椅子から立ったり座ったりするのもこのスクワットです。
沈み込んだ時、膝が前にでる。スクワットは膝に体重がかかるのでこれはやってはいけません。気をつけてください。
イメージとしては、おしりを後ろに突き出す要領(洋式の便座に座る要領)で行う、後ろに腰掛けるようにお腹に力をいれて座ったりまた立ったりするようにする。
スクワットの方法については、HP等の動画を参考にしてください。







最後まで熱心に聞いていただいて感謝します。
ぜひ120歳・100歳まで元気に過ごしてください。
どうもありがとうございました。

「文責:日公連事務局」